*報告特集*
●全清連、国・地方の要請を受け
熊本地震災害廃棄物処理の無償支援へ

4月14日に発生した熊本地震で、被災地は当初から食料、トイレ、住居の確保と併せ、膨大な量の災害廃棄物の処理が問題となった。自力での処理が不可能という状況下で環境省、熊本市は(一社)全国清掃事業連合会に災害廃棄物処理の支援を要請。これを受け全清連は急きょ支援体制を構築し、いつ終わるともしれない余震が続く被災地に向かった。支援活動は4月30日〜6月3日までの計19日間に及び、この間の動員数は車両523台、人員1091名という規模になった。
●余震続くなか19日間、523台、1091人規模
熊本地震の発生は4月14日午後9時26分。熊本県熊本地域で震度7を観測し、電気、水道、ガス、交通など多くのインフラ施設に被害が生じた。最初の地震から28時間が経過した同16日午前1時25分、再び震度7の大きな地震に襲われた。当初の混乱も収まらないうちに立て続けに起きた大地震で被災地の被害はさらに拡大。同時に多数の家屋損壊と、のちに推計195万トンといわれる膨大な量の災害廃棄物が発生した。
全清連に対しては4月15日午前中に環境省から被災地の災害廃棄物処理支援の準備依頼が入った。これを受け全清連本部は、週明けの同18日に各府県連対して無償支援実施に向けた準備・検討を要請した。
のちに判明するが、熊本地震では一般廃棄物処理施設も3施設が稼働を停止していた。このうちの1施設は熊本市で、同市のごみ処理の大部分を担う東部環境工場が損壊。応急措置を施しても本来の日量600トンのうち、270トンまでしか回復しない状態に陥っていた。市内では発災以降、日量1500トンともいわれるごみが排出されており、ごみ処理行政はパンク、市内2万カ所のごみステーションには日に日にごみがうず高く積まれ、手が付けられない事態になっていた。もはや自力での処理は不可能という状況で、熊本市環境局は4月21日、熊本市清掃事業協議会を通じて全清連に早急な支援を要請した。
これを受け全清連は翌22日、直ちに支援実施に向けた調査チームを現地に派遣。熊本市との打ち合わせの上、国からの正式な要請を待った。このような被害が広範囲にわたる災害の場合は、無償支援としてもむやみに動くことはできない。被災地は混乱を極めており、仮置き場、現地の受入れ体制、指揮系統の確認など、国の要請を待たずに動くと結果として現地に迷惑をかけることにつながる。
4月26日、環境省廃棄物・リサイクル対策部長名で全清連に対して支援活動要請文書が届いた。全清連は翌27日の総会で、直ちに支援活動を行うべきとの決議を採択。
全清連の第1次支援部隊は熊本県、大分県、福岡県、中国・四国協議会(山口県、広島県、鳥取県、高松)の県連で構成。宿泊場所は近隣のホテル等は被災し休業状態のため、熊本市の東部環境工場会議室を使用させていただくこととなった。それでもスペース等、受け入れ人数にも限界があるため、比較的距離が近い福岡と熊本、大分は日帰りで支援を行うこととした。熊本県が4月30日から、また福岡県と中国・四国ブロック協議会が5月3日から現地に入り、5月15日かには大分県が加わった。
最終的に6月3日までの19日間で、動員数は車両523台、人員1091名という規模となった。
●支援活動が復興のひとつのきっかけに
熊本地震では交通網も被害を受け、一般道路は断続渋滞が発生し、高速道路も当初は通行止め・一車線規制が敷かれていた。そのような状況下で熊本県の支援部隊は4月30日から、中国・四国協議会および福岡県は5月3日から支援を開始。市内で見たのは大量の災害ごみだった。
5月3日午前8時。支援活動の本格化に先立ち、全清連の活動拠点となる熊本市東部環境工場近くの「ふれあい公園」に支援部隊一同が集まり、出発式が行われた。
全清連三井会長があいさつ。「このたびの熊本地震、大変な災害でございます。まだ余震も続いています。どうか十分に気を付ける中で怪我や事故等ないよう、一生懸命頑張ってください」と呼びかけ、さらに「被災地に少しでも貢献できるよう尽力しますので、ご協力をよろしくお願いします」と激励した。
また熊本市の川口宏浩環境部長は、ゴールデンウィークという連休の中にあっての支援に感謝の言葉を述べるとともに、1回収集しても3日ほどで元に戻ってしまう。集合住宅近くにはごみがうず高く溜まっている。取っても取っても取り足りない状況。役所にも苦情の電話が殺到している――などといった現況を説明した。そして最後に「皆さんが来られたことによって、市民の皆さんも自分の近くからごみが無くなったということを素直に感じられます。応援隊が来るということが復興のひとつのきっかけになって、また頑張ろうという気持ちになると思います。よろしくお願いします」と締めくくり、重ねて感謝を述べた。
川口環境部長の言葉のあと、集まった支援部隊隊員たちは直ちに車両に乗り込み支援活動に入った。地元業者が一台ずつ先導し、そのあとに支援部隊の車両が2?3台続くという班分けで熊本市の中心部、南部を重点的に回った。熊本市は通常150台体制で収集運搬を行っているが、この日は全清連だけで50台以上が集まっている。しかし川口環境部長は「私たちの車両もフル稼働しているが、これは生活ごみ用で災害ごみの専用部隊ではないから、余力はわずかしかない」と余裕がないことを語る。
午後から天候が急変し、猛烈な風雨となった。このような中、丸川環境大臣が東部環境工場の視察に訪れることになった。大西一史熊本市長、木原誠二衆議院議員、馬場成志参議院議員も訪問し三井会長と会談、その後全員で丸川環境大臣を迎えた。
●住民から感謝の声が励みに
一方、支援に出た街中の状況は、話には聞いていたものの予想を超えるものだった。すべてのごみステーションで例外なくごみの上にごみが重なっている。歩道を埋め尽くし車道にあふれ出ている。多少整理されているところでもごみの列が30mも並ぶ――といった状態になっており、1カ所あたり50〜60立方メートルというのがざらだった。
中には破損したガラス、瓦、ブロック破片などの詰まった重量物もあり、かなりの気力・体力を要するが、隊員たちは初めて顔を合わす同業者とも手分けして黙々と作業をこなし、士気の高さが伝わってくる。収集したそばからまた排出されるといったことや、老人や女性からごみの搬出をお願いされることも多かった。
収集現場では住民から「(ごみを急いで持って来て)これは出してもいいの?」「(様子を眺めながら)本当に助かります。ごみが歩道に溢れて子供たちが轢かれないか心配だった」「(車両のナンバーを見て)支援の方ですよね。ありがとうございます」といった感謝の声がかけられ、それが励みにつながった。また「ガラス片が散乱していて危ない」「臭いでカラスや獣が集まってくる」など困っている声も聞かれ、収集のスピードを速めないと、という気持ちにもさせられた。
収集したごみは東部環境工場近くの仮集積所に集め、そこからまた収集に向かうというピストン輸送を5月9日まで連日行った。
●第2次、第3次支援、益城町にも派遣
全清連の第1次支援部隊は5月9日で撤収したが、翌週の14、15日からは熊本県、大分県、福岡県で構成する第2次支援部隊が現地入りした。翌16日には大西熊本市長からこれまでの支援に対するお礼と、引き続き支援を求める声が全清連に届いた。全清連は第2次支援を21、22日まで実施した。熊本市内の支援は14日間となり、車両498台、人員1026名という規模になった。
22日には熊本市に隣接する益城町から、西村博則町長名で災害廃棄物処理の支援要請が届いた。この支援には第3次支援部隊として大阪府、京都府、三重県があたり、5日間で車両25台、人員65名の規模で活動した。
益城町は熊本市とはまた状況が異なり、行政もいまだ混乱状態にある中、受け入れ体制も十分ではなく、効率的な支援を行うには益城町、環境省、ボランティアセンターと密接な連携が必要な状況だった。益城町で求められているのは地元委託業者の支援と瓦等のがれきの収集運搬。町は支援のタイミングに合わせて防災無線で各家庭に排出を呼び掛けた。
隊員たちは道端に出された瓦・ブロックを収集するが、1袋30s近い。本来であれば重機を出してもかまわない作業を手で行うためかなりの重労働だ。また地元中学校のわきに山になって排出されているとの情報を受け急行すると、『全国清掃事業連合会様、瓦ごみです。よろしくお願いします!』との張り紙があった。全清連の名前が知れ渡っていることに新たな意欲が湧き、残すわけにはいかないとすぐに取り掛かる。しかし取っても取っても次から次と軽トラで運んでくる。合同で作業にあたるがその話が広まり、隣の村からわざわざ自転車で来て「うちにも来てほしい」とのリクエストも。仮置き場は15時に閉鎖することになっており、全員が1台でも多く運ぼうと昼食抜きで活動した。
ここでも被災者からの感謝の声が多く、それが励みになった。お茶やジュース、地元の焼酎といった差し入れまでいただき、中には涙を流しながらお礼を言って下さる方もおり、もらい泣きするメンバーもいた。
最終日には西村益子町町長が訪れ、感謝の言葉が伝えられた。
全清連の熊本震災支援は6月3日で一旦区切りを迎えるが、さらなる要請があれば可能な限り支援を行っていく。多くの隊員たちが「後ろ髪を引かれるような気持ち」と語ったように、被災地にはまだ多くの災害廃棄物が残されている。熊本県では2年以内に処理を完了するとの目標を打ち出している。
●第1・2・3次支援隊に参加した全清連会員組織
・熊本県清掃事業協議会
・大分県清掃事業協議会
・福岡県清掃事業協同組合連合会
・全清連 中国・四国ブロック協議会
(山口県清掃事業連合会、(一社)広島県清掃事業連合会、
鳥取県清掃事業協同組合、高松清掃事業協同組合)
・(一社)大阪府清掃事業連合会
・(一社)京都府清掃事業連合会
・(一社)三重県清掃事業連合会
このほか、地方自治体が派遣した支援チームに加わった全清連会員(岐阜県清掃事業協同組合)もいます。
●災害廃棄物収集運搬実績
|
作業人数 |
作業台数 |
運搬量(立方メートル) |
4月30日 |
17 |
9 |
128 |
5月1日 |
18 |
9 |
128 |
5月2日 |
2 |
1 |
16 |
5月3日 |
148 |
71 |
1,121 |
5月4日 |
61 |
30 |
658 |
5月5日 |
142 |
68 |
1,441 |
5月6日 |
25 |
11 |
361 |
5月7日 |
152 |
71 |
1,015 |
5月8日 |
32 |
15 |
443 |
5月9日 |
47 |
24 |
291 |
5月14日 |
105 |
53 |
813 |
5月15日 |
84 |
40 |
568 |
5月21日 |
105 |
53 |
681 |
5月22日 |
88 |
43 |
658 |
5月30日 |
13 |
5 |
66.5 |
5月31日 |
13 |
5 |
89 |
6月1日 |
13 |
5 |
91 |
6月2日 |
13 |
5 |
111 |
6月3日 |
13 |
5 |
69 |
19日間 |
1,091名 |
523台 |
8,748.5立方メートル |
(詳細については全清連ニュース第80号をご覧ください)
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